大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡地方裁判所 昭和56年(わ)220号 判決 1981年4月28日

裁判所書記官

矢島睦次

本籍

福岡県嘉穂郡筑穂町大字内野三二九一番地

住居

飯塚市新飯塚四番五号

医師

中村研一

大正一二年八月一五日生

所得税法違反被告事件

検察官阿部貫一郎出席

主文

被告人を懲役一〇月及び罰金一〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

本裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、飯塚市新飯塚四番五号において、中村産婦人科医院を営み、その業務全般を統括していたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、人工妊娠中絶等自由診療収入の一部を除外し、無記名債券等を購入するなどして、その所得を秘匿したうえ

第一、昭和五二年分の実際総所得金額が四六四一万二四二五円あったにもかかわらず、同五三年三月一三日、同市新立岩一一番四五号所在の飯塚税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が二三九四万二八二〇円で、これに対する所得税額が七六六万六一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額二〇九八万〇二〇〇円と右申告税額との差額一三三一万四一〇〇円を免れ

第二、同五三年分の実際総所得金額が 五四一六万六九三九円あったにもかかわらず、同五四年三月一三日、前記飯塚税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が二九七一万八〇二七円で、これに対する所得税額が一〇七六万〇八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額二五九三万七四〇〇円と右申告税額との差額一五一七万六六〇〇円を免れ

第三、同五四年分の実際総所得金額が四三五四万三三三八円あったにもかかわらず、同五五年三月一四日、前記飯塚税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が二〇四六万三八七八円で、これに対する所得税額が五七六万〇三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額一九〇四万〇六〇〇円と右申告税額との差額一三二八万〇三〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官及び収税官吏(二通)に対する各供述調書

一、被告人の検察官及び収税官吏(九通)に対する各供述調書

一、小山泰子、刀根康之輔の収税官吏に対する各供述調書

一、収税官吏作成の領置てん末書三通(検9、15、16)

一、収税官吏作成の差押てん末書二通

一、収税官吏作成の査察官調査書二五通(検18ないし42)

一、押収してある所得税の確定申告書三通(昭和五六年押第一二二号の一ないし三)

判事第一の事実につき

一、被告人外一名作成の申述書二通(検43、49)

一、中村稔子作成の申述書(検50ないし55、58)

一、刀根康之輔作成の申述書

一、収税官吏各作成の脱税額計算書(検3)及びその説明資料(検4)

判示第二の事実につき

一、被告人外一名作成の申述書(検44)

一、中村稔子作成の申述書二通(検55、59)

一、収税官吏各作成の脱税額計算書(検5)及びその説明資料(検6)

判示第三の事実につき

一、被告人外一名作成の申述書(検45)

一一、中村稔子作成の申述書二通(検57、60)

一、収税官吏各作成の脱税額計算書(検7)及びその説明資料(検8)

(法令の適用)

罰条等

判示各所為につき所得税法二三八条一項、一二〇条一項三号(懲役刑に罰金刑を併科)

併合罪の処理

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、四八条一、二項(懲役刑については犯情の最も重い判示第二の罪の刑に加重し、これに判示第一ないし第三の各罪所定の罰金を合算した額以下において併科)

労役場留置

同法一八条

懲役刑の執行猶予

同法二五条一項

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 池田久次)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例